奈良石仏紀行 (1) 春日山 〜滝坂の道〜地獄谷

奈良は石仏の宝庫とも言われている。2000年前後は、特に石仏をよく撮影した。あの頃見たアニメ「もののけ姫」の影響から、森の中を探索するのが好きだった。
奈良の春日山原始林は、春日大社の神の森として長年伐採が禁じられてきた。都市の中に原始林があるという、世界でも珍しい所らしい。
この滝坂の道は、当時、東大寺から柳生の里へ行く唯一の道で、長く石畳が敷き詰められている。その道ぞいには多くの石仏が点在している。

     
              滝坂地蔵                        寝仏


その中でも特に好きなのが「夕日観音」だが、道からは離れていて、近寄って見るには急な斜面を登って行かなければならない。
「夕日」とあるから、夕陽が石仏に当たる向きになっているのだろうが、夕陽に当たったこの観音を見たことはない。
その顔立ちは、法隆寺の釈迦三尊像によく似ている。  その近くに三体地蔵があるが、これは分かりにくいので見落としやすい。

      


その後に「朝日観音」に出会う。場所的にはこの道の中で一番好きな所。

   


それからしばらく歩いて地獄谷と呼ばれる広いところに来る。ここには首切り地蔵と、異様な大木がある。
ここが「地獄谷」と呼ばれるのは、昔、ここが死体の捨て場所だったからだと言われている。

  

この場所は、黒澤明が映画「蜘蛛の巣城」のロケに使った場所でもある。


ここから左へ曲り、道が二つに分かれ、左の道は春日山遊歩道に合流し、右の道は峠の茶屋を経て柳生街道へ続く。
その右の道、石畳の坂道の途中に
春日山石窟仏がある。ここは金網で囲って保護されている。石質が脆いのか、崩れかかっている。

   


石畳の坂道を登って、柳生街道へ抜ける道の手前を右に行き、舗装された道を進むと、左手に地獄谷聖人窟に行く道がある。

   

奈良の中心街から手軽に来れるハイキング・コースとして、多くの人がやって来るので、あまり静かに過せるところではないが、地獄谷聖人窟あたりはわりと人気もなく静かだ。







奈良石仏紀行 (2) 芳山の石仏


滝坂の道を進んで春日山ドライブウェイを横切り、峠の茶屋に至る。この辺りから柳生街道と呼ばれるのか、定かではない・・・
峠の茶屋を過ぎると小さな集落があり、その向こうには茶畑が広がる。
その集落の手前にある小さな神社を左に折れて森の中に入る。途中、金網の門が閉じられているが、鍵はかかっていないので開いて先に進む。
深い森の中を歩き、しばらく行って右へ登れば芳山の石仏がある。

   

一枚岩に二体の石仏が彫られてあるが、こんな人気のない森の奥に、なぜこんな石仏がぽつんとあるのかわからない。






奈良石仏紀行 (3) 仏頭石

春日山遊歩道は二手から入り、南側は滝坂の道と平行した道で、北側は春日大社と若草山の間から始まる。手前に藁葺き屋根の茶屋がある。
その北側からの遊歩道を歩くと、しばらくして左側の土手の中腹に仏頭石と呼ばれる石仏がある。
周囲を金網で囲まれてあるが、何の目印もないため、知らない人は気づかずに通り過ぎる。

    

頭だけで、首から下は角柱状で、珍しい形をしている。何かの施設に取り付けられていた部分なのだろうか・・・・?
傍らには、平たい石に線刻された仏像もある。その形ははっきりとは見難い。他に類のない珍しい石仏である。






奈良石仏紀行 (4) 若草山の三体地蔵

大仏殿北側、正倉院のあたりから、若草山に登る有料道路がある。料金所を過ぎてしばらく走る途中、道の左側に三体地蔵がある。
一応、標識は立てられているが、林の中で、地蔵仏も小さく、あまり目立たない。

  

知らずに通り過ぎる人がほとんどだろう。  でも、なかなかかわいらしくて、好きな石仏のひとつだ。






奈良石仏紀行 (5) 奈良坂夕日観音

夕日観音は滝坂の道にもあったが、こちらは別の夕日観音。
  

奈良公園と奈良県庁の間、369号線を北に進む。川を渡る橋の手前、本線は右に曲るが、直進する細い道に入る。
鎌倉時代に忍性上人が病人救済のために建てた国史跡の北山十八間戸のすぐ北側にある。
光背に、興福寺の僧が、死後の冥福を願う逆修のために、永正6年(1509年室町時代)に造立したとの刻銘がある。
等身大の大きな地蔵である。






奈良石仏紀行 (6) 般若寺

東大寺正倉院の北、369号線を進み、二手に別れた左手の道に看板が出ている。
おそらく奈良の寺院の中で、最も多く訪れた寺かもしれない。
  

真言律宗の寺だが、創建時期などは不明。奈良時代〜約1300年前頃には既に建てられていたらしい。
コスモス寺として有名で、ここには美しい石仏が数多く置かれている。石仏の質の高さでは、個人的には奈良ではベストだと思っている。
コスモスだけでなく、紫陽花、山吹などの咲く季節も美しい。






奈良石仏紀行 (7) 元興寺極楽坊

猿沢の池を南に、大通りを渡って路地を入った右側。広い境内で、真言律宗の寺。
本堂が飛鳥時代の建築様式をよく表わしている、と言われているが、私にはよくわからない・・・
石仏は、それほど特徴のあるものでもないが、花との取り合わせがいい。 6月の、桔梗とはるしゃぎくの咲く頃がいい。

 

特に、はるしゃぎくが石仏を覆うような風景・(左の黄色い花の写真)・が好きなのだが、あまり一般には知られていないようで、
私が撮影していた時も、私一人だけの独占状態だったし、昔、「キタムラ」で展示会をした時も、この写真を見て、どこの場所か聞く人がよくいたらしい。
でも、撮影したのは10年以上前だから、今はどうなっているのかわからないが・・・・






奈良石仏紀行 (8) 正暦寺泣き笑い地蔵

奈良市菩提山町にある正暦寺。この参道の途中に、泣き笑い地蔵と呼ばれる二体の石仏がある。
ただ・・・ この名称〜泣き笑い・・・?

  

どうも、そんな顔には見えない。それに、どちらが泣き顔か、微妙である・・・
それでも、泣き地蔵と呼ばれている方の顔は、なかなか清楚な顔立ちをしている。
ここ正暦寺は紅葉の名所でもあるが、冬の南天もいい。紅葉の季節はカメラマンでにぎわうが、普段は人気もなく、森に囲まれた静かなところだ。







奈良石仏紀行 (9) 南椿尾磨崖仏


正暦寺の道を戻り、二手に別れる道を左(南)に行き、一山越えて、下り道の家並みの中を進み、途中、右手に降りる細い農道があるのでそこを降りる。
その農道の奥に岩面に彫られた石仏がある。
  

何の目印もないし、本通りからはまったく見えない・・・ わかりにくい所である。        でも、この地蔵もなかなかいい顔をしている。






奈良石仏紀行 (10) 切り付け地蔵

 奈良市南田原町の切り付け地蔵。 切り付けと呼ばれている意味は知らない。
 春日山ドライブウェイの入口に行く80号線をそのまま東に進み、横田町の信号を右に曲る。
のどかな風景が広がる農道の左側の岩盤に彫られてある。鎌倉時代の作。

  

                                      これも端正で優しい顔をした地蔵である。






奈良石仏紀行 (11) 喜光寺

奈良中心街より308号線を西へ、近鉄尼ヶ辻駅を過ぎたあたり、阪奈道路に入る手前の北側、菅原町に喜光寺がある。
宗派は法相宗。奈良時代の僧、行基が没した地。この寺はの花の名所。6月下旬から7月にかけて、いろんな種類の蓮が咲く。
蓮が見られる寺は、他には唐招提寺や十輪院くらいだが、その数と種類の豊富さではこの寺が一番である。

ここに、インドから送られてきた仏陀の石像がある。蓮との取り合わせが美しい。

 

また、別に多くの地蔵石仏がある。







奈良石仏紀行 (12) 天理福住・阿弥陀笠地蔵

25号線、名阪国道の福住ICの北、村道の片隅にポツンと立っている。

 

笠を被った地蔵仏で、これも他では見かけない独特な姿をしている。笠を被っている理由も、何か歴史的な出来事が関係しているのかもしれない・・・
ここは、天理から針、山添村に続く旧道。昔の旅人を労っていたのかも・・・







奈良石仏紀行 (13) 北出橋阿弥陀磨崖仏

柳生の里へ続く道。東大寺より東へ369号線、途中、円成寺を経て、柳生の里の手前、阪原町、道が二手に分かれ、左の細い方に入る。
川沿いに走るあたり、その川辺の岸壁に石仏が彫られてある。

      

                                        とても端正で、かわいらしい顔をしている。







奈良石仏紀行 (14) 長岳寺〜奥の院道

長岳寺は奈良県天理市柳本町にある高野山真言宗の寺院。紅葉の名所。山之辺の道の中間点にあたる。
ここにある石仏で主要なのは、弥勒石棺仏と呼ばれるもの。

     

また、長岳寺の左手から竜王山へ行く山道を登ると、途中、小さな石仏が点在する。その最終地点に奥の院不動明王像がある。
そこへは、山頂手前あたりに右側に分かれ道があるのでそちらを行く。このあたりはほとんど藪に覆われていて、踏み跡を進んで行く。
深い森の中に忽然と不動明王像が立っている。






奈良石仏紀行 (15) 桃尾の滝の石仏と竜福寺道

桃尾の滝は天理市、石上神宮の東側、福住ICへ至る25号線の天理ダムより手前にある。
奈良中心街から車で手軽に行ける滝で、信仰の場でもある。多くの種類の龍神が祀られていて、一度ここで滝行を初めて見たことがある。
この滝の傍らにちいさな不動明王と如意輪観音石仏がある。

     

また、この滝への道をさらに上に登ると、竜福寺があるその道ぞいにも石仏がある。







奈良石仏紀行 (16) 平群谷清滝石仏群

奈良県生駒郡平群町。 近鉄生駒線東山駅を西に、千光寺に至る道を進む。大通りより右へ細い脇道に入る。千光寺に至る道もこの道。
途中、左側に降りる道があり、その渓谷に石仏がある。小さな滝もある。ここも信仰の場所だったのだろう。


   







奈良石仏紀行 (17) 室生寺石仏

室生寺は、奈良県宇陀市にある真言宗室生寺派大本山の寺院。 開基(創立者)は賢きょう、本尊は釈迦如来。
 天武天皇9年(680年)、役小角(えんのおづぬ、役行者)の草創、空海の中興という伝承もあるが、記録で確認できる限りでは、奈良時代最末期の草創と思われる。

    

4月下旬の石楠花、11月の紅葉の季節が見事。昔は、土門拳の室生寺の写真にずいぶん感化された。







奈良石仏紀行 (18) 大野寺磨崖仏

室生寺に行く165号線の室生寺入口を右に曲って、室生寺に至る赤い橋を渡らず、川沿いに左に進むと、枝垂れ桜が名所の大野寺がある。
その寺の川向こうに大きな磨崖仏が岸壁に彫られてある。

  
   弥勒磨崖仏。

紅葉の時期がいい。







奈良石仏紀行 (19) 矢田寺

矢田寺と言えば紫陽花。 矢田寺にある石仏は、味噌なめ地蔵と呼ばれるものがあるが、
それよりも、本堂への階段を上がった左の奥に、ひっそりと佇んでいる小さな地蔵に関心を寄せられた。


   






奈良石仏紀行 (20) 寝地蔵

桜井市小夫にある寝地蔵・・・  といっても、道順は正確には説明できない。
一応、道に看板は出ているが、田舎の山道で、何の特徴もなく、たぶん今行ってもまた迷うだろうな・・・

鎌倉後期、1309年、願主藺生(いう)庄住人祐禅浄覚坊という人の作。

  

おそらく、後になって岩全体が倒れたため、寝姿になってしまったのだろう。人気の無い山の中にある。







奈良石仏紀行 (21) 桜井市念誦窟墓地石仏

念誦窟「ねずき」と呼ぶ。桜井市の談山神社の西、155号線の横の旧道を森の中へ進むと念誦窟墓地に来る。
ここにある地蔵石仏は、なかなか質の高さを感じさせる。墓地でもあり、なんとなく幽玄的な雰囲気があるところ。

   

その近くに不動磨崖仏もあるが、ここへ行くには、道から外れて、草むらの中をかすかな踏み跡を頼りに進む。







奈良石仏紀行 (22) 談山神社西大門跡の石仏

紅葉の名所、談山神社の西側、山の方へさらに進む。
西大門跡の北側、石垣の上に置かれた石仏で、花崗岩の自然石で作られている。

 

高さ1.51m。奈良市内の、在銘石仏としては最古〜1266年〜のもの。
これも穏やかな表情をしている。この道をさらに進むと念誦窟墓地石仏に至る。






奈良石仏紀行 (23) 明日香村岡寺

岡寺は真言宗で、厄除けの寺として親しまれている。本尊は如意輪観音。それにしても、奈良には真言宗の寺が多い。

   

非常に小さな石仏だが、その顔立ちは本当に美しい。






奈良石仏紀行 (24) 八井内石仏

桜井市八井内「やいない」と呼ぶ。気まぐれに、奈良の地名で、珍しいもの、読めないものなどを列挙してみるのもおもしろいかも・・・
ともあれ・・・
こちらへは、桜井市から南下して談山神社へ向かう道の途中に、八井内不動滝があり、
その傍らに破れ不動と称する小さな不動石仏と、そこから旧道を南に進んだところに、地蔵磨崖仏がある。

  






奈良石仏紀行 (25) 明日香村亀石横の地蔵仏

明日香村には不思議な石造物が点在していて、その石造物の中で亀石の横に地蔵石仏が立っている。
等身大以上で、地蔵仏としてはかなり大きい。

    






奈良石仏紀行 (26) 川上村 蜻蛉の滝の入口の地蔵仏

川上村 蜻蛉の滝。
吉野より169号線を大台ケ原方面へ進む。最初の長いトンネルを抜けてすぐ右に曲る。

蜻蛉「せいれい」とはトンボのこと。
この滝も見事だが、この滝の入口手前の右に、小さな地蔵石仏がある。その表情が、なぜかとても心を捕えてしまっている。

  

私にとっては、一番印象的な石仏である。






奈良石仏紀行 (27) 青葉の滝の石仏

165号線、奈良県宇陀市室生と三重県名張市の境界付近。道より少し入ったところに青葉寺という日蓮宗の寺があり、その奥地に青葉滝がある。
滝の入口に鳥居が祀られていて、信仰の滝であろうが、おもしろい形状の滝である。
その場所の左の岸壁に石仏が彫られている。これも一風変わった姿をしているが、その名称はよくわからない。


  













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