1998年10月9日
般若寺
般若寺の創建事情や時期については正史に記載がなく、創立者についても諸説あって、正確なところは不明である。ただし、般若寺の境内からは奈良時代の古瓦が出土しており、天平14年(742年)の正倉院文書に般若寺の名が見えることなどから、この寺が奈良時代に存在していたことは確かである。
寺伝では舒明天皇元年(629年)、高句麗の僧・慧灌(えかん)の創建とされ、天平7年(735年)、聖武天皇が伽藍を建立し、十三重石塔を建てて天皇自筆の大般若経を安置したというが、これらを裏付ける確実な史料はない。
別の伝承では白雉5年(654年)、蘇我日向臣(そがのひむかのおみ)が孝徳天皇の病気平癒のため創建したともいう(『上宮聖徳法王帝説』裏書)。
平安時代に入って、10世紀初め頃には聖宝(しょうぼう、真言宗の僧、醍醐寺の開山)の弟子の観賢(854年−925年)が中興したというが、その後平安時代末頃までの歴史はあまり明らかでない。
治承4年(1180年)、平重衡による南都焼き討ちの際には、東大寺、興福寺などとともに般若寺も焼け落ち、その後しばらくは廃寺同然となっていたようである。