日本各地方への旅

日本各地方への旅

小浜市

小浜市

●伝説其の壱

--- むかし若狭国に高橋権太夫という長者がいた。 商売は貿易で、ときにはみずから船にのりこむこともあった。 
あるとき、長者は見知らぬ小島に上陸し、美女にみちびかれて御殿へ招かれた。 
そこの王は長者を心から歓迎して山海の珍味をつぎつぎと運ばせた。 長者も喜んでご馳走になったが、その中に一つ人魚の肉というものがあった。
 王はとても美味しいし不老寿の妙薬だからとさかんに勧めるが、長者にはどうも気味悪く感じられて、どうしても箸がつけられなかった。 
やがて数日間の美しい思い出の島を後にして長者は自宅へ帰った。 
 家では遭難したのかと思っていたので大喜びであった。 そして桃源郷のような小島の話わきくと、口々に不思議がった。 
ところで別離にさいして王はあの人魚の肉をお土産にくれた。 それを長者は披露したが、やはり気味悪がって誰も食べようとはしなかった。
 こうしてその包みは棚の上に乗せたままになっていた。 ところが、その家の16,7歳になる娘が、珍しいもの見たさに開けて一口食べてみた。 それはさすがの長者の家でもかつて味わったこともない美味しさであった。 
娘は思わずもう一つと手を伸ばした。 それでも止められず、とうとう全部食べてしまった。
 こうして、その娘は800歳まで生き延びることになった。



●伝説其の弐

--- むかし小浜の狭香丞(きょうかのじょう)という人がいて、たいそう音楽を好み、親しい友人たちと管弦講を楽しんでいた。 
その会にあるとき一人の老人が加わったが、じつに上手なので、なくてはならぬメンバーになった。  狭香丞には娘があったが、先妻に早く死なれたため、後妻つまり継母の手で育てられていた。 継母はたいへん性悪な女で、若い男を家へ引き入れていたばかりではなく、二人で狭香丞を殺す手はずをととのえた。 ところが、娘がその相談を聞いて父親に伝えたため、狭香丞は裏をかいて、かえって暗殺者の片腕を切り落としてしまった。 すると継母は、娘がいいつけたのに違いないと、夫が管弦講に出かけた留守に、娘を毒殺してしまった。
 知らせに驚いた狭香丞やその友人がかけつけたが、すでに娘は息が絶えていた。 そのときあの不思議な老人が進み出て、「わしが持っている不老長寿の霊薬を進ぜよう」といって、見たこともない薬を飲ませた。 
こうして娘は生き返ったばかりか、800歳も長命を保ったが、その老人は南山の仙人だといわれている。  その娘-八百比丘尼は全国を行脚してまわって、最後には故郷の若狭へ帰った。 そして空印寺内の洞窟に入って死んだと伝えられている。

2003年8月30日

八百比丘尼入定洞

若狭小浜 - 八百比丘尼 (空印寺)

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